当社専属講師 井上智洋先生の新刊『人工超知能-生命と機会の間にあるもの-』が発売されました。
人工知能=AIに関する著作としてはベストセラー『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』(2016年)に続くものですが、今回はAIそのものについての内容です。現在の肩書は経済学者ですが、もともと情報系の学部でAIの研究をされ、IT関係の仕事もされていました。
本書では、人間の知性と同等あるいはそれを“超える”AIを作り出すことは可能か、という問いをめぐる様々な考え方や立場を紹介しつつ、先生の見解が述べられています(今のところは出来ないが、作り出す仕組は不可能ではない、というのが先生の見立て)。
もしAIが人間を凌駕したらそれは一種の脅威です。ただ、そう簡単ではない。しかし、その危険を無視して今後のAI開発の方向性を考えていいものか。例えば、AIのマイナスの可能性について表立って論じる機会が日本では少ない、わずかでも起こりうる可能性のある危機には対策を講じるべき、というのが先生の立場。そのための材料として、AIが、なぜ、どのようにして人知を超えたものとなりうるか、についてAIの歴史、仕組み、正体(!?)から説き起こされています。
先生のご講演(レポートはこちら)はいつも分かりやすい内容と解説、話し方が好評ですが、本書もそれに違わず。中には哲学的でやや抽象的な議論も含まれますが、それがどう具体的な事例に結び付くかをその都度示してくれますので、置いていかれることはありません。現実的な問題意識から離れることなく、考えるべき問いの整理、議論の紹介をし、やや専門的な概念も分かりやすい例えを用いて一つ一つ解きほぐす。とても読みやすく、特に文系ユーザーにフレンドリーな仕様です。
ビジネスの世界ではAI関連の話題が花盛りですが、ここ数年のAI進化の速度はあまりに急速で、(良くも悪くも)予想だにしなかったことがまた突然のように実現することは十分あり得ます。今からその準備的議論をすべきという先生の問題提起は至当でしょう。(本書では、例えばAI=ロボットが自分に与えられたルールやモラルを自分で変えてしまうこと―目的関数の自己改変を禁じるべきといった、重要な指摘もされています。)
好むと好まざるとに関わらず、ブームが過ぎようとも、AIの時代は到来しつつあります。その中を生きていくための基礎的な教養として本書を手にとっていただきたいと思います。
(黒い一連星・ホクロ♡)
余談ですが・・・
人間とAIが“知恵比べ”をしたらどうなるか、を描いたものとしてはアレックス・ガーランド監督の映画『エクス・マキナ』がよく出来ています。